2007年06月26日

聖地・クレモナへ!

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鮮やかな夏の朝の日差しの中、列車はゆっくりと黄色の駅舎へと滑り込む。ガタピシと、ぎこちない音を立てて、ドアが開く。そよぐ空気が、2等客室の籠もった空気を静かに掻き回す。そして男は高い車床からステップを下り、プラットホームへと降り立った。駅舎に掲げられた看板には「Cremona」の文字が輝いていた。


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皆さん、ブォン・ジョルノ! せばすちゃんです。 導入にも書いたように今回はイタリア・クレモナへと行ってきた。もちろん、こんなブログを読んでくださっているフィドル野郎やバイオリン・ジャンキーはご存知だと思うが、クレモナは言ってみればバイオリンの聖地。クレモナ産というだけでビックリするほど値段が跳ね上がる、庶民にとっては迷惑も甚だしいところである。一泊だけではあるが、かの聖地に足を踏み入れることが出来たので、レポートをお届けしたいと思う。全2回の予定!


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クレモナは北部イタリア、ロンバルディア州に位置する人口8万人の小都市である。小さな街だが、起源はなんと紀元前218年にまで遡るというフザけた歴史ある都市だ。ちなみに今回も飽くまでも仕事のついでの来訪である。ボローニャという街で学会に参加したのだが、たまたまイタリアへの出入り口であるミラノとボローニャの間にクレモナが存在してしまうのである。そりゃね、たまたま通り道にクレモナがあるなら、寄らざるをえないでしょうよ…漢として! なに? それじゃどうして往路は飛行機でボローニャ入りだったのに、帰りは列車なんだって? …小五月蝿いこと言うんじゃないよ、ゲール君。いやだって、イタリアってストとか多いしさ…列車は飛行機と違って墜ちないしさ…ぶつぶつ。

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クレモナが何故バイオリンの聖地として有名なのか? 一重にコイツ、アントニオ・ストラディバリの名声故であろう。(コイツ呼ばわりかい) バイオリンをやらない人でも、この名前だけは聞いたことがある人は多いだろう。そのストラディバリがこの街でバイオリンを製作していたのである。街中でもストラディバリゆかりの地名やモニュメントが多数ある。

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これはストラディバリの墓碑と言われているものらしい。実は広場付近の公園にさりげなく置かれているものなので、まず普通の観光客では気づくことすらなさそうな扱いだ。もっとも本物の墓じゃないし、記念碑的なものらしい。上に載っている石蓋だけは本物か?と言われているそうだが、そもそも本当の墓も判っていないそうなので、それも胡散臭いですナ。

ところで、人口わずかに8万人、地球の歩き方にも2ページしか載っていない小都市なのに、さっきから情報がえらく細かいとお気づきのアナタ! 流石です。 実は今回のクレモナ訪問においては、超ウルトラ強力なお方がガイドをして下さったのである。

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その方はクレモナ在住のバイオリン製作家・菊田浩さん。この方は最近メディアへの露出が多くなっているので、雑誌などで見かけた方も多いはず。昨年には第11回・ヴィエニアフスキー・バイオリン製作コンクールで優勝、つい先日には第13回・チャイコフスキー・コンクールのバイオリン製作部門において優勝と、破竹の勢いを誇る日本人製作家である。実は私もキット物ではあるがバイオリン製作なんかをしている(参照)ので、ブログやメールを通じてお話はさせて頂いていたのだが、今回のクレモナ行きのお話をすると、快くお相手を引き受けて下さったのである。実に有難く、光栄な話である。だって国際コンクールで優勝ってことは、世界一ってことですよ!? 世界を制した漢と親しくさせて頂けるというのは、よく考えたら凄いことだ。…ガイドなんかさせちゃって良いのだろうか…。

恐縮はしたものの、菊田さんは実に穏やかで気さくなお人柄で、実に親切にお相手をして下さった。実際クレモナの情報はほとんど無かったのだが、そこはプロの製作家であり、クレモナに5年暮らしているだけあって、これ以上は望めないくらい完全無敵のガイドぶりだった。写真が撮れないのでお見せできないのが残念だが、市庁舎の中にあるバイオリン展示場やストラディバリ博物館も一緒に訪れた。


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市庁舎の方にはストラディバリ、アマティ、ガルネリと世界最高峰のバイオリン・ヴィオラが並び、ストラディバリのチェロも展示されている。 この一部屋だけの資産価値で、下手な国の国家予算を軽く超えてしまう恐ろしい部屋だ。 いや〜、いずれも高名なバイオリンなれど、間近で見たのは初めてデス。でも正直言って、これらが一般のオールド・バイオリンに紛れ込んでいても、見た目ではよく判らないかも。しかし菊田さんにお聞きすると、やはり一目瞭然なのだそうな。う〜む、バイオリンって弾く方もだが、やはり作る方も芸術家なんだなぁと実感。

一方、ストラディバリ博物館は広大な美術館の一角にあるのだが、たどり着くだけでも難しいし、展示もイタリア語しかないので、並の観光客では見学するのは困難かも。しかし今回は菊田さんによる詳細な解説付きである。掲示されていることより詳しい説明なので、実に面白い。しかし、ストラディバリの多彩さは凄かったんですなぁ。ヴィオラ・ダ・ガンバや、ギター、マンドリン、挙句の果てにはバイオリンケースの金具の設計までしていたようだ。バイオリンだけで1000本作ったと言われているのに、んなことまでやってたのね…恐るべし、ストラディバリ…。


ところで市庁舎と博物館の共通入場券を購入したのだが、実はこのチケットは製作家だと半額で購入できる。菊田さんはともかく、私まで製作家だと言って、半額で購入。うん…嘘じゃないよね…誇大なだけさ! しかし世界最高峰の製作家と、世界最底辺の製作家が一緒につるんでいるとは、チケット売り場のオジサンも夢にも思うまい。
posted by せばすちゃん at 22:33| Comment(10) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
まずは無事の帰国、祝着ある^^

熱い報告になると思わせつつ静かな立ち上がりですな。しかし、やっぱりうらやましいな。今の仕事してたら出張でクレモナなんてあり得ないですからねぇ...。
しかも、世界の製作家菊田さんのガイド付きとくりゃ、VIP待遇やね。時々行く焼き鳥屋でも名前が出るくらいのビッグなお方に案内していただけるなんて、この幸せモノめ♪
続きも楽しみにしてまっせ。
Posted by も@崖っぷち at 2007年06月26日 23:46
>もさん
ただいまです♪
いや〜、私も国際学会なんてガラじゃないんですけどね〜^^;
おまけに出張先がクレモナからわずか1時間とは…ま、これも何か
の巡り合いでしょう(笑)

本当に考えられないくらい豪華なガイドですよね〜^^;;
噂どおりの穏やかで素晴らしいお人柄でした^^ 奥様にも随分と
よくして頂きました。

次回は菊田さん以外にも凄い方々が登場してきます。
お楽しみに〜♪
Posted by せばすちゃん at 2007年06月27日 00:08
いいな、いいなぁ〜うらやましい限りでござる。素晴らしい時間をすごされたんですね!

で、クレモナの1挺は?
なんか買いました?
Posted by Kevin O’Hagi at 2007年06月27日 02:34
お帰りなさい。

えっ?もちろん、菊田工房か高橋工房の一本をお持ち帰りなんですよね〜?

はっ、まさか、博物館からがめてきたとか・・・
Posted by い〜ぐる at 2007年06月27日 05:50
お帰りなさい!
駐車している車もレトロでいい雰囲気ですね。
それで、今日、ゲットしたものの公開ですよね?は、もしかしてK田さんの入賞作品?(笑)
Posted by neco at 2007年06月27日 06:40
>Kevinさん
いやもう、本当に素晴らしい時間でした♪
流石にクレモナ産はちょっとやそっとでは
買えませんね^^; 菊田さんの楽器とか
本当に素晴らしかったんですけどね〜。

お世話になりすぎちゃって、強奪出来ません
でした…(笑)

>い〜ぐるさん
ただいまです♪
い〜ぐるさんは絶対にクレモナ行くべきですね〜。
かなり楽しめると思います。

博物館からガメてたら今頃帰国できてませんってば(笑)
でも警備も超厳重ってことはなかったような…まぁ盗んでも
処分の方が難しいんでしょうね。

>necoさん
ただいまです^^

イタリアと言えば、この車ですよね〜。私の大好きな
FIAT500が止まっていたので、撮ってみました^^
街に映えるのはフェラーリよかコイツですよね♪

入賞作品は寄贈しちゃうので、残念ながら手元には
帰らないそうです…ちっ(笑)
Posted by せばすちゃん at 2007年06月27日 07:02
せばすちゃんさん、ご結婚おめでとうございます。
ご結婚され、文章も益々冴えていますね。
読んでいて楽しいです。
早く次が読みたい! 誰が登場されるんでしょう。
またセッション出来る日を楽しみにしております (やっつける曲、探しておかないとな・・・・フッ・・)
Posted by nori at 2007年06月27日 10:44
>noriさん
有難うございます♪
次の決戦では負けないように私も修行しておきまする^^

次回の記事では世界を制した漢達が多数登場してくれます。
中には超大物も! お楽しみに♪
Posted by せばすちゃん at 2007年06月27日 11:22
今、横山進一が書かれた「ストラディバリウス」という本を読んでいます。
たくさんの巨匠を生み出した聖地クレモナがどんなところなのかと検索していたら、すぐにこのページにたどり着きました。
写真見ていたらとっても、クレモナ行ってみたくなりました∩^ω^∩
ありがとう!
Posted by ゆぅ at 2010年09月13日 02:31
ゆぅさん、はじめまして!

最近はこのブログも更新が止まってしまってますが、クレモナを
訪れた日のことは今も鮮明に覚えています♪ 本当に小さな街です。
でもバイオリンに携わっているヒトなら一度は訪れる価値はあると
思いますので、ゆぅさんも機会がありましたら是非^^
Posted by せばすちゃん at 2010年09月13日 15:29
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